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2021年6月16日水曜日

「じゃあ、最期まで騙されていってよ」演劇が好きってこういうことじゃないかな



(6月15日)演出家の印南貞人さんが他界されたと知りました。
栃木県内の演劇を志す方達がこの方からどれだけの言葉を掛けられ、
どれだけの彼の背中姿を見ていたのかと想像します。

昨年、印南さんの携わる舞台を観に行ったとき、
「誰に誘われたの?ほんと、じゃあさ、最期まで騙されていってよ」
とニコニコとした眼でチケット切りをしてくれた。

彼に会ったのは20年以上前になります。当時、上昇志向が強かった私に

「大学は行ってるのか?授業は出ろ。頭が悪かったら芝居なんてできない。裏方を勉強しなさい。社会にちゃんと出て社会を知ってきなさい」

そういって、演劇の世界にどっぷりと漬かりたかった私に別な道を提案してくれた。

そのまま信じて、社会人となり、今となるが、結局は舞台の世界で飯を食っている。
でも、もしもあの時、彼に別な道を案内されなかったらー と思うと、
すこし怖い気がする。生半可な気持ちで道を決めて、中途半端な挫折をしたのじゃないかと振り返る時がある。

一度終わった筈のダメ出しを、思いついたようにまた言う。
手を変え品を変えてまた言う。

なんて面白い人なんだ。彼の言葉はおそらく全て、私の胸に突き刺さり、そのまま育っている。彼と会わない演劇人生があったら、きっとそれはつまらなかったろう。

「官民の方、もっと文化にお金を出してください」とある会で堂々と言う彼が
20代の私には光り輝いて見えていた。

仕事関係の印南さんの同級生から聞いたことがある。

「あいつは人を食ったような奴だけど、とにかく優秀でね、みんなあいつのことが好きなんだよ」と。

どんな人生を彼が歩んだかは知らないが、少なくとも私にとっては、彼の言葉は全て服となって私は着ている。まんまと私は最期まで騙されたクチじゃないだろうか。それが楽しい。

六月十五日は天赦日。天が罪を赦す日。天国の受付は混雑しそうだけど、
シメシメとチケットを握りしめているように想像してしまう。

お疲れさまでした。飲み過ぎないようにご注意下さい。

心から感謝を込めて

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